安全な食文化と北海道の写真


TSIの活用

2013年03月03日 22:03

 

最近盛んにあちこちで開催される食品安全に関わるセミナーについて、その内容について製造現場との距離感を感じる事が多くあります。
以前東京で「食の安全はとてもお金になるからやめられないんだ、、、」などと浮かれ気味になっている食品経験のないISOコンサルと接し危機感を覚えました。実際、北海道の地方の小規模な食品工場が道外から入り込んできた食品コンサルタントに法外な請求を受け経営が立ち行かなくなった企業も多くあります。この手の食品コンサルは食品の現場経験無しに「食品安全」という食品事業者の絶対的なテーマを闇雲にふりまわす。
「我々のサポートを受けなければ、この時代会社は存続できない、、」
彼らは食品の物造りの現場を混乱させ、企業に莫大な損害をあたえ、消費者を危険にさらしている現実を知るべきだと感じます。
 
彼らの話題で現実味が無いと感じることのひとつに、
彼らの話題はおよそ、何かのセミナーで見聞きした仮想な微生物危害の話題で参加者の不安を強引に煽ったり、
検証や分析経験のない空想の「微生物危害」をあたかも自分で導いたかのように論じています。
とどおつまりすべて仮想、想像リスクを話題の中心に据えて危機感を煽る手法なので、ほとんど新手の宗教詐欺と同じレベルである。
まともに聞いていると食品などもう国内で作らない方がいいじゃないか、という気持ちになります。
 
「そのリスクは実際にどこで発生し何が原因で、どうすれば予防でき安全水準になるのか、またはそのリスクの予防方法の維持管理について現場では具体的にどんなことをしているのか、、」などというような生の事例については触れる事はできない。
だから、どうか、彼らのような宗教コンサルの被害にあわないよう、僕は食品企業にはきちんと自社で分析できる力量をもってほしいと思っています。
 
企業がもつべき分析検査のひとつに微生物検査では、是非TSI培地をきちんと見れるようになってほしいと思っているのです。
TSIは学生時代に微生物実習で一度使った事がある程度で、その後、実際に食品企業の品質検査の現場で実務で使うようになり、依頼この培地ほど重要なものはないと感じています。
推定試験で疑陽性反応のあった集落について、第二段階の確認試験に使います。
TSI培地とはTriple Sugar Ironの略で、三種類の糖の分解性を主に見るのですが、それ以外にも硫化水素の産性、ガスの産性の性情を観察することができます。三種類の糖はブドウ糖、白糖、乳糖ですが、配合率がブドウ糖0.1%、白糖と乳糖がそれぞれ1.0%ずつ配合されています。
 
ブドウ糖のみ分解する微生物は白糖、乳糖を分解しませんので、培養初期の段階でわずかな配合のブドウ糖を分解したときの酸で培地全体が黄色くなりますが、24H後には培地中のペプトンの分解で斜面部の培地がアルカリ化していきます。
ブドウ糖のわずかな酸はアルカリの強さに負けて斜面部から赤くなります。
なので、斜面は赤、高層部分は黄色いままになります。
また全体が黄変のままであれば三種類の糖の分解性がある、、ということがわかります。
このように培地の色の変化の経過で、微生物のもつ酵素の特徴を観察することができます。
 
このことは汚染指標菌である大腸菌群の特徴や様々な病原菌の特徴を確認するうえでとても重要になります。
推定だけで病原菌や汚染菌を判断すると、経済的な大きな損失や信用不安を招くことになります。
また、TSIは製品の微生物フローラをみたときに、これら糖の分解性を把握することで品質低下の原因菌の焦点をあてることができます。
写真はサルモネラ菌の疑いある微生物をTSIで判定したときの画像です。
サルモネラは白糖、乳糖非分解なので、試験管右(二本対になっている右の試験管)のTSIにみられるような全体が黄変することはありません。
それ以外にも硫化水素をつくるけど、ガスは出さない、など、、、
 
反応結果
硫化水素=P(+)、ガス=N(−)、Glucose=P(+)、Lactose=P(+)、Sucrose=P(+)という結果です。
サルモネラ
硫化水素=P(+)、ガス=N(+)、Glucose=P(+)、Lactose=N(−)、Sucrose=N(−)

なのでこの疑わしい集落はこの段階でサルモネラからは外れます。
更にこの培地とあわせてLIM培地で運動性やリジン脱炭酸性、インドール反応をみていますが、いずれもサルモネラの性情とは一致しないので
疑いのある集落はサルモネラ陰性の判定をしました。
疑わしきはすべて廃棄、、とするのは立派だけれど、きちんと判断しないと会社は潰れます。
食品企業の検査では、この検査もとても重要なツール です。
ぜひ品質管理、安全管理に活用してほしいと思っています。

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